Traffic Engineering
トラフィック制御は,ネットワークバックボーンを通過するトラフィックを調整し,ネットワークのリソースとパフォーマンスを最適化する手法である.通常のトラフィック制御では,特定の条件に基づいてトラフィックをクラス分類し,トラフィックがどのネットワークパスを使用するかを指定する.
LSPメトリック
RSVP LSPにも手動でスタティックメトリックを割り当てることができる.LSPコストはLSPパス上にあるインタフェースに割り当てられたIGPメトリックに関わらず変更されない.LSPがフェイルオーバーしても,LSPメトリックは設定された値のまま固定される.
リンクカラー
リンクカラーを設定することで,特定のネットワークリンクを0~31の32個のいずれかの値でマーキングすることができる.リンクにマーキングを行い,特定のLSPが特定のリンク(カラー)を経由するよう(あるいはしないよう)に設定することが可能である.
JUNOSでは,このタイプのリンクマーキングを管理グループによって行える.
リンクカラー制御されたLSPリンクを保護するためのバイパスLSPは対象のカラーを含む必要はない.しかし,ファストリルートによって保護されるファストリルート経路はLSPの制約を継承するため,リンクカラー制御の特性を受け継ぐ.完全なリンクカラーグループのパスが形成できない場合,LSPは有効にはならない.
管理グループによる制限を設定するときのオプションにはexclude, include-all, include-anyの3つがある.
TED(Traffic Engineering Database)
ドメイン内のRSVPが有効になっている各ルータ(NodeID)に関する情報が保持されるデータベースである.TEDには,各エントリについて実行されるTEプロトコル(OSPF/ISIS)や,インタフェースの宛先(隣接ルータのLoopbackアドレス),性的帯域幅と予約可能帯域幅,メトリック,管理グループなどの情報が含まれる各ルータはTEDを参考にしてリンクカラーなどの管理制約のあるLSPを生成する.
StrictおよびLoose LSPホップ
ルートテーブルとLSPの結合
inet.3テーブルにはデバイスのRSVPおよびLDP LSPのエンドポイントが保持される.この目的は,BGPにネクストホップ解決をする手段を与えるためである.inet.3テーブルは,利用するプロトコルはBGPだけであり,LSPを使用するトラフィックはBGPトラフィックとなる.
BGPネクストホップのインストール
MPLSルータ間でiBGP経由で広報されたルートは通常ではMPLS LSPは利用されず,inet.0テーブル内でネクストホップ解決される.これを解決するためには,LSP配下にinstallオプションを設定する必要がある.installオプションで特定のネクストホップをinet.3テーブルにインストールすることができ,これによってMPLS LSPでのネクストホップ解決が可能となる.
[edit protocols mpls] ps@dalwhinnie# show label-switched-path dalwhinnie-to-oban { to 10.200.86.3; install 192.168.90.12/30; link-protection; primary via-blair; }
ただし,デフォルトではBGPはネクストホップがinet.3テーブル内に保持されるルートに対してLSPを使用することができ,inet.3テーブルにあるネクストホップ自体にLSP経由でトラフィックを送信することはできない.
installオプションにactiveオプションを追加すると,RSVPルートがinet.3テーブルからinet.0テーブルに移動する.この場合でも,BGPはネクストホップ解決のためにinet.0またはinet.3テーブルを利用できるため,プロトコルネクストホップの解決によって引き続き同じLSPが使用される.
ただし,この手法はスタティックルートと同じく拡張性は低く,ルートごとの設定オーバーヘッドが増える.
TE:bgp-igp
ネットワークの全ての内部トラフィックが(可能な場合)LSPを使用することができるようにする場合,その手法の一つとしてmpls階層にtraffic-engineering bgp-igpを設定する方法がある.この設定により,inet.3テーブルの内容がinet.0テーブルに移される.これによりinet.3テーブルにあったlo0アドレスなどのルートがLSPを使用できるようになる.traffic-engineering bgp-igpはLSPごとには設定されず,グローバルに適用される.
TE:bgp-igp-both-ribs
VPNをサポートする場合,MPLSではLSP送信アドレスがinet.3アドレスに保持される必要があるが,前述のtraffic-engineering bgp-igpを適用するとinet.3テーブルが空になってしまう.そのため,traffic-engineering bgp-igp-both-ribsを使用することでinet.3テーブルの内容をinet.0テーブルへコピーする.これによってトラフィックがLSPエンドポイントへのルートにアクセスできると同時に,これらのエンドポイントがinet.3テーブルで維持されるためVPNをサポートできる.
TE:mpls-forwarding
前述のtraffic-engineering bgp-igp-both-ribsを使用するとinet.3ルートのプリファレンスの方が優先されるため,inet.0テーブルに保持される宛先へのIGPルートに変わってinet.3ルートが使用される.
inet.0テーブル内のIGPルートをアクティブな状態にしてルーティングを維持する場合には,traffic-engineering mpls-forwardingを設定する.このオプションはIGPルートを使用可能にする必要があるポリシーで必要になる場合がある.
IGP Shortcut
traffic-engineering bgp-igp-both-ribsを適用している場合,内部ネットワークのloopbackアドレスに対してはLSP経由での転送が可能となっている.全てのネットワーク内部トラフィックがLSPを使用できるようにするためにはospf traffic-engineering配下でshortcut設定を行う.これによって全てのネットワーク内部トラフィックが,使用可能であればLSP経由で転送できるようになる.
IGPへのLSPの直接アドバタイズ
IGP設定配下でメトリックとともにLSPのアドバタイズを設定することで内部ネットワークトラフィックはLSPを使用することができる.この場合,ベストプラクティスとして逆方向のLSPも同じメトリックを割り当てることが勧められる.
ポリシーベースのLSPマッピング
同一のEgressルータ宛で異なるパスが割り当てられている複数のLSPがある場合,通常であればどちらかのLSPパスが選択されるが,ポリシーを使用して経由するLSPを割り当てることができる.
ポリシーのthenステートメント内にてinstall-nexthop lsp を行う.また,routing-option forwarding-table階層でexport でLSPを割り当てるポリシーを指定することで,目的のプレフィックスが適切なLSPを使用するようにマッピングされる.
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